若かりし頃に仕立てた着物が中年になった今、太ってしまって着られなくなってしまった!!
こういうことはよく起こることなので、一生を通して着る代表格である留袖などは少しサイズを大きく仕立てるようにしています。
それでも許容範囲を超えて太ってしまった場合、最悪着られない状態になってしまうことも実際に起っています。
ここでは着物のサイズが合わない時の対処法についてまとめたいと思います。
着物のサイズが合わない時はどうしたらいい?
自分用に仕立てた着物でサイズが合わなくなったなら、仕立てた時よりも恰幅がよくなったのが原因です。
身体で一番太い場所、主にお尻が大きくなってしまったことで着物の幅が足りなくなってしまうんですね。
着物は一枚布でできている訳ではなく、反物を縫い合わせて幅を出しています。
なので着物の幅が足りなくなってしまうと上前(着物を着た時に上側にくる方)の端が脇まで持って来られず、はだけやすくなってしまうんです。
じゃあもっと引っ張ればいいじゃない?と思われるかもしれませんが上前の端を脇にあわせると、今度は上前の脇の線が正面近くに入ってきます。
もともと脇線は身体の真横にくるものですので、知っている人がみたら「あら?」と思われるかもしれません。
これだけではなく上前の端を脇まで持ってくることで、着物全体を左に回転させることになるので下前の布が短くなってしまいこちらもはだけやすくなってしまうんです。
とは言え、誰もが着物にサイズがあることを理解してはいらっしゃいませんので着付けの段階で身幅が足りないことに気づくことがとても多く、着付師さん泣かせとも言えます。
かくいう私も時々着付けをさせていただきますが、結婚式当日になって新郎のお母様の身幅が足りなかった経験もあります。
そんな時は極力、表面上では身幅が足りないことを隠す努力をさせていただくワケですが、上記のとおり着物全体を左側にまわして上前の端を脇まで持ってきました。
あとは裾がはだけないように裏側から安全ピンで留めて仕上げさせていただきました。
見る人が見れば左の脇線がズレているので身幅が足りないことに気がつくかもしれませんが、素人目には分かりません。
このように身幅が足りない着物は全く着られなくなる訳ではなく、少々不便なことは出てくるけども着られないことはありません。
ただし完璧に着こなしたい場合は着物の幅出しをしてもらうことが必要になります。
着物によってどれだけ幅を出せるかは違いますので、一度着物をお持ちになって呉服屋さんに相談されるといいですよ。
着物のサイズが太ったら着れなくなってしまった!
太ってしまっても多少無理をすれば着物は着ることができる、と書きましたが実はどうしても無理な場合があります。
それが「着物をかけ合わせた時に布地が重ならない場合」です。
着物は身体の正面で右側を下に、左側を上に重ね合わせるわけですが、この重なりがほとんどなくなってしまうほど太ってしまうと着ることができません。
一度、長襦袢でこのような状態の方の着付けをしたことがありますが、結婚式直前ということもあり襟元を糸で縫ってなんとか送り出しました。
これが着物でこの状態であれば完全にアウトでした。
このような状態になってしまったなら、着物を巾出ししようと思っても布地の長さが足りないため着られなくなってしまいます。
若かりし頃とあまりにも体型が違ってしまった場合に起こる現象ですので、体型維持は大切ということですね。
着られなくなってしまった着物は娘さんに譲るなり、着物の買取に出すなりして処分してしまいましょう。
その着物を再び着られるようになることは、あなたの体型が昔に戻ることでしか叶わないのですから。
着物はデブは似合わない??
着物を着付ける時はその人の身体の引っ込んでいるところを埋めるように補正していきますので、着物を着ると太って見える!という方もいらっしゃいます。
でも太っているからと言って着物が似合わないかというと、決してそうではありません。
旅館の女将さんなんかもどんなにふくよかな方でも着物が似合わない!とは思わないでしょう?
太っていることが気になるなら太って見えないような着付けにしてもらえばいいのです。
私がお客さまに着付けをする時は、むやみに補正を入れず体についているお肉で対応できる場合はガーゼなどでお肉を移動させて対応しています。
バストが大きい方もできるだけ潰させていただいて、スッキリした着付けになるよう心がけています。
着付け次第で見え方はかなり変わりますので、信頼できる着付師さんを見つけましょう。
まとめ
いかがでしたか?
着物は仕立てる際の体のサイズに合わせて作られることが多いので、中年期にはサイズが合わなくなることがあります。
だからと言って完全に着られなくなるわけではなく、ある程度のごまかしはききますので時間がある時に着物の幅出しを行うといいでしょう。
完全に着られなくなるまで体型が変わってしまうと、その着物はもう着ることができなくなってしまいます。
着物を長く着るためにはあまり極端な体型の変化を起こさないこと。
体型の変化さえなければ着物は一生涯着ることができるものになります。
たとえ太っていたとしても、着付け方次第では逆にスッキリ見えることもありますのでぜひ着物生活をエンジョイしてくださいね。