親が高齢になってくると同居や老人ホームへの転居を機に自宅と荷物の処分を頼まれることがあります。
通常の生活用品は必要不要で割切って捨てられるものですが、扱いに困るのが思い出の品です。
母の着物などはその代表例でしょう。
場所を取るし使う機会も限られるけれど捨てるのはあまりに勿体ない。
祖母や曾祖母から贈られたものだと聞けば処分すること自体が間違いにも思えてきます。
こうした時は後で後悔しないように両親の思いを汲んだ選択をするのが一番良いでしょう。
といってもこれは「親の言った通りにする」という意味ではありません。
大抵の母親は「別にいいよ、捨てちゃって」と言います。
しかし捨てていいものをわざわざ大切に保管しているわけがないですよね。
これはあなたや家族に迷惑をかけないようにとの配慮です。
真に受けずきちんと気持ちの裏まで考えましょう。
親が最も喜ぶ解決策は子供や孫が自分の着物を使ってくれることです。
母親が娘や孫に着物を譲るという行為は父親が成人した息子や孫と酒を飲むのに相当する人生の喜びだったりします。
しかしサイズが合わない、既に自分が使う着物は持っている、正直デザインが好みではないなどの理由からこの方法を選べないことが多いのも現実です。
だからと言って思い出の品を捨ててしまうというのは後味が悪いですよね。
家族が使わないのであれば友人知人、あるいは第三者に使ってもらう形をとりましょう。
前者は着物が欲しい知り合いに譲るという方法です。
この方法を選ぶ時はただ渡すだけでなく相手に気を使わせない工夫をしたいところです。
着物は基本的に高価な上に素人ではどの程度のランクのものか判断できないので、相手がお返しなどに困ってしまうことがあります。
欲しがってる人がいない、人にあげて気を使わせるのも悪いと思う人は、着物買い取りサービスを利用して第三者に使ってもらいましょう。
事務的な売買で問題が解決するので気疲れもしません。
この際売却で得たお金は直接母親に渡すのではなく、家族みんなの外食代に使うという形を取ると「いいから取っておけ」「返さなくていい」の問答をする必要がなくて楽です。
母の着物をそのまま手元に置いておいてもタンスの肥やしとなるだけで、いずれタンスの中で朽ちてしまいますが、着物買取で売却することで他の誰かの手で再び活躍することになります。
元の持ち主であるお母さまもタンスの肥やしになるよりは、着物として実用してくれた方が嬉しく感じてくれるでしょう。
また最終的に譲渡、売却という選択をするにしても母親の希望を一部叶えてあげることは可能です。
たとえば着物は売るけれど帯だけは取っておいて使わせてもらう、売却前に孫などに着せて写真を撮っておき見せるといった方法です。
どうせ着物を着るなら貰い物ではなく自分の気に入ったものを買って使いたいと考えるのは何ら悪いことではありません。
そのままタンスの中で保管し続けたとしても、さらに世代があなたのお子さんに移った時にお母さまの着物は確実に処分されてしまうでしょう。
しかし祖母から母へ、母から子へ、子から孫へと着物を受け継いでいくことが女性の幸せの象徴だった時代があったことも確かな事実なのです。
どのような方法を選ぶかは人によって違いますが、できれば後世の邪魔にならないような方法を選びたいものです。
多少面倒であっても自分を愛し育ててくれた両親のためにできるだけその気持ちに寄り添った選択をしてあげて下さい。
きっとそれは母親だけでなくあなたの心にも暖かく優しいものを与えてくれるはずです。